銀座のテナントビル
 
2019
所在地 :東京都中央区
用 途 :商業ビル
構 造 :RC造
規 模 :地上4階+塔屋
延床面積:111.54㎡
 
3D visual camera 
 

路地のように細い敷地
敷地は昭和通りから路地に入り、約2.7mが接道している路地のような旗竿地である。
銀座という街に埋もれるように3年間放置されていたその敷地は、どの方向からも高さのある建物が敷地ぎりぎりまで建っていた。上を見上げるときれいなL型の空が見えた。
この路地から路地に入っていく感覚と空からの光を大切にしたいと思った。
銀座の中央通りや昭和通りといった大通りの直交方向には無数に路地がある。その路地のは誰もがイメージする銀座とは異なる。多くの銀座にある商業ビルが持つ透明さやある種の派手さではなく、建物がひしめき合う中に鐘塔のような誰もが見上げる強さを持った建築が必要であると思えた。
 
環境の異なる2つの箱
足場を設置できる最小寸法を確保しながらアウトラインを描き、4階まで積み上げる。1階フロント上部に大きな吹抜けを設けることで容積率ぎりぎりの床面積を確保した。旗部分に整形のちょっとだけ大きなボリュームと竿部分に細長いボリュームを配置し、各階の明るさの違いも含めた環境の異なる場を用意した。
その2つの場ボリュームを高さ方向に少しずらし、全体で緩やかに繋がる空間を実現している。
建物を一棟貸しとすることによって、階段室も1階ホール部分も専有空間として利用することができる。電気や設備のスペックに対しても各室ごとの過剰な状態ではなく、全体としてバランスの良い計画となっている。
 
光と空の階段室
細さに対してRC壁構造の階高上限とフロント部の面積を最大限確保するため、階段の段数を調整し、小さな階段でそのまま路地を引込むことを意図した。
階段室は移動だけの空間ではなく、各室へ光をもたらし、商品の展示や各室が溢れ出すもう一つの場であると考えている。
1階から上階にゆっくりと光を辿りながら登っていくと、トップライトから空が見え、前面建物のない屋上へ辿り着く。
 
1:7.7の塔状比
銀座という軟弱地盤でありながらも、L型の敷地形状に対して重機勝負の鉄骨ではどうしても最奥が厳しい。構造設計者、施工業者とも打ち合わせを行いながら、人力勝負のRC造を初期の段階で選択することにした。
フロント部は、国内最小の杭機であっても、詳細な軌跡を描いて施工検討をしなくてはならないほどの狭さであった。
最小の杭機であるために杭の本数を増やすことが必要となるが、敷地の狭さに対して設置箇所と本数に制限がある。そのため、各隅に均等に荷重がかかるように、構造上可能な限り大きな開口を同じ大きさで向かい合った面にバランスよく設け、建物荷重を減らしている。
その大きな開口と吹抜けによって、エントランスホールは建物に挟まれた路地のような空間となっている。
銀座の地区計画による道路斜線の緩和を用いるために、建物を道路境界から500mmセットバックし、1階バック部を物販店舗と設定した。
鉄骨階段と階段室の大きなガラス面は、RC2つのボリュームに対してXY方向にルーズ穴を設けたエキスパンションジョイントとし、構造的に縁を切っている。それに加え、フロント部を小さな平面形とし、カウンターウエイトの1.2mのマットスラブと、高さ2.4mのパラペットによって、1:7.7の塔状比を実現している。
 
銀座という特殊な街に埋もれそうになりかけていた場所が、新たな価値を生み出すきっかけになることを期待している。
 
照内創/SO&CO.
 

写真撮影 太田拓実